きのこの備忘録

筆者が調べた事やまとめた事を共有しています。医療職を対象とした記事がメインです。論文のような正確性よりは分かりやすさを優先して書いています。一般臨床への応用は自己責任でお願いします。

2021-01-01から1年間の記事一覧

胃管と胃瘻

・胃管は胃・食道潰瘍形成や鼻血などのリスクが高いため、30日未満の使用が望ましい。 ・高度認知症患者の嚥下障害に対する胃瘻栄養は余命の延長効果がないため推奨されず、少量でも慎重な食事介助による経口摂取の継続のほうが望まれる。 ・脳梗塞後の嚥下…

利尿薬か補液か

低Alb血症により血管内脱水を来しており、腎機能が悪化している症例をみました。 補液をしても水分は血管内にとどまれず、胸腔、腹腔、皮下に溜まっている状況でした。 この場合に、補液をするという意見と利尿薬を使うという意見に分かれそうなので、それに…

肩周りの筋肉について

■正常関節可動域 ・屈曲:180度 ・伸展:50度 ・外転:180度 ・内転:0度 ・内旋:80度 ・外旋:60度 ■筋肉 ・屈曲:三角筋前部 ・伸展:三角筋後部+大円筋+小円筋 ・外転:三角筋中部+棘上筋 ・内転:大胸筋+広背筋+菱形筋 ・内旋:三角筋前部+広背筋…

上肢の筋肉と脊髄レベル

肩周りの筋肉:C5 上腕二頭筋:C5 母指側の前腕筋:C6 上腕三頭筋:C7 広背筋:C7 小指側の前腕筋:C8 手内筋:C8+Th1 だいたいこんな感じかもしれません。 解剖大事です。

下肢筋と髄節レベルと神経支配

L2:腸腰筋:腰神経叢 大腿内転筋:閉鎖神経 L3:大腿四頭筋:大腿神経 L4:前脛骨筋:深腓骨神経 L5:長母趾伸筋:深腓骨神経 中殿筋:上殿神経 S1:長母趾屈筋:脛骨神経 S1:下腿三頭筋:脛骨神経 S2:ハムストリング:坐骨神経(総腓骨神経+脛骨神経) …

Surfer’s myelopathyについて

先日はじめてサーフィンをしましたが、サーフィンでは稀に外傷の病歴なく脊髄症になることがあります。Surfer’s myelopathy(以下、SM)と呼びますが、その機序について調べてみました。 正確な病因は解明されていませんが、基本的には体幹過伸展の持続もし…

大腿骨の骨折の種類

大腿骨の骨折には骨折線の部位により、①骨頭部骨折、②頸部骨折、③転子部骨折、④転子下骨折、⑤骨幹部骨折に分かれます。 大腿骨頸部より近位は股関節の関節包に入ります。そして関節包内は骨膜がないため、大腿骨頭を栄養する血流は骨内を通ってきたものしか…

栄養評価の指標、MNAについて

今月から勤務中のリハ病院では、入院患者に定期的にこれを評価しています。 この指標で何が分かるか、自分なりに調べてみました。 1990年代に開発されたMNA(Mini Neutritional Assessment)は65歳以上を対象とした栄養評価の指標であり、30点満点中何点をと…

カテーテルアブレーションの合併症

カテーテルアブレーション後に心膜炎を来した方をみたので、カテ―テルアブレーションの合併症について調べてみました。 主要な合併症は疾患によっても異なるようです。焼き切る部位によって合併症の起こりやすさが異なるのは了解可能です。 ・上室性頻脈への…

心室性期外収縮でのカテーテルアブレーションの適応

心室性期外収縮でカテーテルアブレーションを施行されている患者をみたので、どのような患者が適応になるか調べてみました。 ・動悸など心室性期外収縮の症状を来している時 ・ホルター心電図で脈の10%以上、もしくは10000回/日が心室性期外収縮がある時 ・…

回復期リハビリテーション病院と薬価の関係

療養型病棟や回復期リハビリテーション病棟では、薬剤費は原則として入院基本料に含まれます。 そのため薬価が高額になれば転院に難色を示されることがあります。 【https://multimedia.3m.com/mws/media/1923679O/med-613-a-medicalenvironmenttopics5.pdf…

骨折による血清CRP値の推移

骨折後のCRP高値は比較的よく見ますが、その自然経過について調べてみました。 手術をした方がしないよりCRP値はやや高値になるようですが、基本的に外傷または手術の2-3日後にCRPはピーク値をとり、以後漸減し3週間ではほぼ正常化するようです。 【https://…

回復期リハビリテーション病院の実績指数

回復期リハビリテーション病院は、設備や実績により得られる入院費が異なります。 すなわち、手厚い設備があり患者のADLをより向上させた実績がある病院は高い診療報酬を請求できることになっています。 基本入院料は一番高い"入院料1"が1日21290円(2129点…

骨折後の血清ALP値の推移

ALPはアルカリ環境下でリン酸化合物を加水分解する酵素で、肝臓、骨、小腸や胎盤に多く含まれています。骨ではALPは骨芽細胞膜に存在し、骨形成の際に血中に流出しますが、骨折の際の血清ALP値の推移について調べてみました。 大腿骨頸部骨折、転子部骨折で…

クモ膜下出血の神経障害

クモ膜下出血で高次機能障害を来している患者をみました。 該当患者はクモ膜下出血発症後、約1週間後に脳梗塞を来していましたが、MRI画像上の梗塞はわずかな部分のみで高次脳機能障害を説明しにくい領域でした。 そこで、クモ膜下出血で神経障害が起こる機…

養護老人ホームと救護所

"養護老人ホーム"に入所している方が入院してきました。 退院後はそちらに戻りたい希望があり、どのような施設か知らなかったので調べてみました。 基本的にはADLが自立している65歳以上の高齢者が、自宅生活困難になった場合に入所できる施設のようです。 …

白内障術後眼瞼下垂

脳梗塞で受け持った患者に眼瞼下垂があり、はじめは脳梗塞の影響だと思っていたのですが、健側だし脳梗塞以前からあったとのことでした。 詳しく聴くと、白内障術後から眼瞼下垂が起こったようで、調べてみると白内障手術の手技で術後眼瞼下垂を起こすことが…

胸部X線で肺の膨らみを評価する

時々胸部X線をみながら、この肺は膨らんでいないとか、含気不十分という会話を聞きます。何をもとに指導医がそう判断しているか、知識があやふやだったので調べてみました。 基本的に肋骨と横隔膜の交差する高さでおよそ見当がつくようです。 正常の場合、右…

心原性脳梗塞に制酸薬?

心原性脳梗塞に直接経口抗凝固薬とともにプロトンポンプ阻害薬(制酸薬)が開始となっている症例をみました。 ストレス潰瘍予防に処方しているのかもと思い調べてみましたが、該当患者に当てはまるリスク因子はありませんでした。 アテローム性脳梗塞やラク…

特定機能病院と回復期リハビリテーション病院の連携

医療機関の役割分化のため、基本的に特定機能病院は急性期医療に集中する目的で回復期リハビリテーションを開設できないことになっています。 【https://www.pt-ot-st.net/contents4/medical-treatment-reiwa-2/2245】 しかし、病院を別にすれば問題ないよう…

片耳に声が響く? 耳管開放症の病態生理

最近自分がよくなるのですが、ある時不意に片耳がくぐもって声が響くようになります。何だろうと思って調べてみたら、恐らく耳管開放症でした。 今回は耳管開放症について勉強したことを共有していきます。 耳管は中耳腔と上咽頭(鼻咽腔)をつないでおり基…

小児・AYA世代のがん療養について

30歳代の脳腫瘍末期の方を診察しました。 40歳未満なので介護保険は使えず、自宅退院には凄くハードルが高いこの世代。 この制度の"谷間"の世代は小児・AYA(Adoecent-Young Adult)世代という名で呼ばれることがあるようです。 【https://ganjoho.jp/reg_st…

働くすべての人が知っておきたい、傷病者手当について

現在リハビリ科研修の中で、社会福祉の制度について勉強する機会を頂いています。 その中で"傷病者手当"についてはすべての労働者が知っておいた方が良い知識だと思います。個人的に大事なだと思った点についてまとめて共有します。 ■受給対象 ・社会保険加…

上大静脈症候群で目脂が増える?

後輩がみた上大静脈症候群の患者が目脂の増加を訴えていたようなので、何か病態生理上意味がある訴えなのか調べてみました。 涙液は下記の3層構造からできています。 ・最内層:主に円蓋部結膜にある杯細胞から産生されるムチン層 ・中間層:涙腺によって生…

一般内科医も知っておきたい身体障害者手帳の内部機能障害について

医学の知識も大事ですが、医療の知識が患者を救うこともあります。 身体障害者手帳について勉強したら、一般内科医も知っておいた方が良いと思う事項があったので共有します。 身体障害者手帳は症状が固定化した身体障害を有する患者が申請し取得できるもの…

ホスピタリストも知っておきたいリハビリ算定の基礎知識

リハビリには下記の表の通り主に6種類の区分があり、各々で算定日数制限や点数などの違いがあります。 ※リハビリテーション料(Ⅰ)の届出を行った保険医療機関の点数 どの患者にどのリハビリ区分で算定するかはリハビリテーション医が詳しいですが、リハビリ…

産業医の資格をとりました

産業医の集中講義を受けて産業医資格をとりました。 内容がとても有意義で、産業医の存在は臨床医のみならずすべての労働者に知る価値があることだと思ったので概要を共有します。 労働者には、自らの健康を保つよう努める自己保健義務がありますが、事業所…

肝疾患でIgAが高値になる機序

アルコール性肝炎の患者のIgAが高値でした。 その機序について調べてみたので共有します。 血清中のIgAは単量体がメインだが、唾液、胃液、腸液、涙、初乳、粘液、汗などの分泌物中では二量体として存在する。 二量体IgAは多くの分泌液中に存在するリゾチー…

白血病反応と慢性骨髄性白血病と慢性好中球性白血病の鑑別

アルコール性肝炎での好中球著高患者について調べているうちに、アルコール性肝炎のような白血病反応(Leukemoid Reaction:LR)と慢性骨髄性白血病(CML)と慢性好中球性白血病(CNL)の鑑別について興味が出てきたので調べてみました。 CNLは主にCSF3R遺伝…

アルコール性肝炎で白血球が高値になる理由

3週間以上の発熱および白血球著明高値を来しているアルコール性肝炎の患者をみました。 恥ずかしながらアルコール性肝炎の知識や診療経験が少なく、膠原病などが合併している可能性を考えていたのですが、どうやらアルコール性肝炎だけでも発熱や白血球高値…