きのこの備忘録

筆者が調べた事やまとめた事を共有しています。医療職を対象とした記事がメインです。論文のような正確性よりは分かりやすさを優先して書いています。一般臨床への応用は自己責任でお願いします。

運動負荷を伴う訓練を実施するための基準(リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン第2版)

訓練中止を考慮する具体的条件(数値編)
収縮期血圧180-200mmHgを超える場合、または収縮期血圧70-90mmHg未満の場合
・脈拍40未満、または120-150/分を超える場合
・呼吸数5-8回/分未満、呼吸数30-40回/分を超える場合
・SpO2:88-90%未満
 
※バイタルサイン等については具体的な数値を示している部分もあるが、これらはあくまで目安であり、絶対的なものではない。特に心大血管疾患の急性期や術後早期、脳血管疾患の急性期等では全身状態は不安定であり、本基準のみで適切に対応することは困難である。そのほか、高齢者やがん患者等虚弱な患者においても慎重な対応を行う必要がある場面もある。実際の診療現場においては個々の患者の状態に応じて個別に判断する必要がある。これはリハビリテーション処方を行う医師の責任において行われることが求められる。
 
 
訓練中止を考慮する具体的条件(その他)
・新規の不整脈意識障害、胸痛、頭痛、腹痛、悪心嘔吐、めまい、浮腫
・原因不明の意識障害、胸痛、腹痛、悪心嘔吐、めまい、浮腫
・バイタルサイン異常を伴う呼吸状態不良、胸痛、腹痛、悪心嘔吐、めまい、浮腫
・痙攣が新たに生じた場合(新規でなくてもよいと思われる)
・症候性不整脈
・著明な脈拍変動
・増悪傾向の意識障害
・急速な呼吸状態悪化
・急速に増悪した浮腫
・激しい頭痛
 
問題があっても訓練実施を考慮できる条件
下記の場合は、原因が明確であり、全身状態が安定していると判断できる場合は、訓練を実施することを提案する。ただし、訓練を実施する際には、症状やバイタルサインの変化に注意し、訓練内容は患者の状態に応じて調整する必要がある。
 
・血圧上昇・血圧低下
意識障害(※失神やせん妄含む)
・呼吸状態が不良
・胸痛
・筋骨格系疼痛
・頭痛
・嘔気嘔吐
・めまい
・発熱
 
日本リハビリテーション医学会. リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン第2版. 診断と治療社 2018.
 
本基準の印象
・本文にも記載されているが、各々の根拠に使われるエビデンスの多くは、リハビリテーション医療の対象となる患者群とは必ずしも一致していない、という限界があるため、あくまで参考所見としての認識が良いだろう。ただ何も基準がないなかでリハビリテーションを行うよりは、本書のような基準があった方が安心であろう。
・訓練中止を考慮する具体的条件(その他)は細かくみていくと
"新規ー"と"原因不明のー"と"バイタルサイン異常ー"の記載がある症状は少しずつ異なっているが、その違いに大きな意図はないものと思われる。理解しやすい形にまとめると、原因不明(新規含む)、もしくはバイタルサイン異常を伴う、もしくは重度・急性増悪を来した上記症状の場合は運動負荷訓練中止を考慮する、でよいだろう。