きのこの備忘録

筆者が調べた事やまとめた事を共有しています。医療職を対象とした記事がメインです。論文のような正確性よりは分かりやすさを優先して書いています。一般臨床への応用は自己責任でお願いします。

高次脳機能障害患者の復職に際し、主治医はどう産業医と連携をとるべきか

復職の基本的な流れは下記になっています。1)
本人の復帰の意思→主治医の許可→産業医の許可→事業者の最終判断
 
産業医の許可に際し、産業医は患者の許可を得たうえで必要に応じ、主治医に"勤務情報提供書"を送付し職場復帰の際の意見を求めることがあります。
 
特に主治医ー産業医の連携が必要な場面として、①メンタルヘルス不調者、②就労継続するがん患者、③意識消失など安全上のリスクがある患者、④その他(おそらく高次脳機能障害はここに分類)が指摘されています。2)
 
"勤務情報提供書"にはいろんな書式がありますが、職務内容、勤務形態、勤務時間、通勤方法、通勤時間、休業可能期間、有給日数、利用可能制度などの記載欄があります。3)4)
 
主治医はそれをもとに"主治医意見書"を作成し、会社は"それを参考に産業医、患者、事業者(人事部)で話し合い、職場復帰プランを立てていくことになります。
 
ただし実際②でも患者の職場環境を正確に把握できないと正確な許可が出せません。
なので産業医との連携が必要だと思う場合は、②の際に患者経由で、事業者(産業医)へ"勤務情報提供書"を依頼してみてもよいかもしれません。
 
1) 川島恵美ら. 産業医はじめの一歩. 羊土社. 2019.
2) 「主治医から産業医への情報提供の必要性について」(日本産業衛生学会 産業医部会幹事会). 2015.
3) 厚生労働省. 企業・医療機関連携マニュアル. 2021年3月.
4) 垰田和史.「会社と主治医間の情報連絡シート」.滋賀医科大学社会医学講座衛生学部門. 

脊髄損傷患者の便秘症ではどの薬を選択すればよいか

ドイツのガイドラインを参考にしました。1)
日本の"脊髄損傷の排便マニュアル"2)や英国のガイドライン3)は薬の記載はあっても選択優先度の記載はなく、オーストラリアのガイドライン4)は薬の記載が乏しく代わりに非薬物治療のフローチャートの記載が充実していました。
 
脊髄損傷を含む神経因性腸機能不全は、S2-4の排便中枢より上の障害か否かで、上位運動ニューロン病変と下位運動ニューロン病変に分かれます。円錐部脊髄損傷以外は基本的には上位運動ニューロン病変になります。
上位運動ニューロン病変では便秘が、下位運動ニューロン病変では便失禁が問題になりやすいです。
上位運動ニューロン病変の場合、Bristol stool scale:3-4で2日おきの排便が目標になります。
下位運動ニューロン病変の場合、Bristol stool scale:2-3で1日1-2回の排便が目標になります。
 
そのために用いられる手段のピラミットは文献1)の図2に記載されています。

 
このピラミッドの最下層の薬物療法において、定期的な排便排出を得るためにまず経肛門下剤を考慮し、腸管の運動性や便の硬さに応じ経口下剤も併用していくことが推奨されています。使用薬剤もレベル1,2,3に分かれ文献1)の図3に記載されています。レベル3の経口下剤は短期間のみ使用が推奨されています。
 
経肛門下剤のレベル1はCO2下剤であり、新レシカルボン座薬などが該当します。
経肛門下剤のレベル2はグリセロールやソルビトールによる潤滑剤(おそらく日本なし)や浸透圧薬による浣腸が該当します。
経口門下剤のレベル3は刺激性下剤であり、テルミンソフトなどが該当します。
 
経口下剤のレベル1は主に食物線維豊富な食品が記載されています。
経口下剤のレベル2は浸透圧性下剤であり、ラクツロース、マグネシウムポリエチレングリコールが記載されています。
経口下剤のレベル3はセ浸透圧性下剤であり、センナ、ピコスルファート、ビサコジルが記載されています。
 
1). I Kurze, et al. Guideline for the management of neurogenic bowel dysfunctin in spincal cord injury/disease. Spinal Cord. 2022; 60(5):435-43. PMID:35332274. 【https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35332274/
2). 赤居正美. 脊髄損傷の排便マニュアル. 2013.【http://www.rehab.go.jp/application/files/4815/2039/6868/07_29_01_PDF3.7MB.pdf
3). Guidelines for management of neurogenic bowel dysfunction in individuals with central neurological conditions. 2022 Jan 10. 【https://www.mascip.co.uk/wp-content/uploads/2015/02/CV653N-Neurogenic-Guidelines-Sept-2012.pdf
4). Management of the neurogenic bowel for adults with spinal cord injuries. 2022 Dec.
 
ピラミットやレベル別の記載は有難いですが、非侵襲的治療法で腸の動きが悪いタイプ(例:便は柔らかいのに少ししか出ず、直腸まで降りてこない)に対する記載は乏しく、レベル3の経口下剤は短期しか使えないとするとどうアプローチすればよいかわかりませんでした。下痢便をある程度許容し、レベル1や2の薬を増やすべきなのか、やむなしでレベル3の薬を使っていくのか、悩ましいところです。

睡眠時無呼吸症候群でCPAPを使用する際にどのタイプのマスクを選択すべきか

簡易型睡眠時無呼吸検査で、受け持ち患者の重症睡眠時無呼吸症候群が発覚しました。今まで呼吸器内科がCPAP導入してくれる環境が多かったので甘えていましたが、自分でできないとマズいと思って改めて調べてみました。
 
CPAPマスクには①鼻マスク、②鼻ピローマスク、③口鼻マスクがあります。
どのマスクを選択する方が一番良いのでしょうか。
 
※マスクのイメージはこの文献の表3が参考になります。1)
 
鼻マスク、鼻ピローマスク、口鼻マスクによるCPAP療法のアドヒアランスと効果をアセスメントするため、AHI>15の閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者に対するCPAP療法において、それぞれのマスクを1か月間使用した際のCPAPアドヒアランス(使用時間/一晩)をメインアウトカム、残存AHIなどをサブアウトカムにしたランダム化クロスオーバー試験があったので紹介します。2)
 
CPAPアドヒアランスは、下記のように鼻マスクが最良で、AHIの改善も良好でした。
・鼻マスク:   3.96±2.26時間/晩 残存AHI:4.0±4.2
・鼻ピローマスク:3.48±2.20時間/晩 残存AHI:4.1±3.3 
・口鼻マスク:  3.26±2.18時間/晩 残存AHI:7.2±5.2
 
サブグループ解析で、全体では一番成績が悪かった口鼻マスクでアドヒアランスが最良だった患者が25.9%いて、これらの患者は他より有意にNOSEスコアが低めおよび顎が縦長なことが分かりました。
 
※NOSEスコア(Nasal obstruction symptom evaluation scale)は鼻閉の自覚症状の程度を反映するスコア。高い方が重症。
 
鼻閉の人は口呼吸になるので、鼻マスク/鼻ピローマスクで睡眠時無呼吸症候群が改善しづらく、アドヒアランスが悪くなり、その分口鼻マスクの方が良いと思われていたのに、鼻閉が軽い人で口鼻マスクのアドヒアランスが高いなんて、案外そうでもないみたいですね。顎が縦長の人は口鼻マスクが良いのはよくわかりません。鼻も長くなりがちで鼻マスクだけでは覆いきれなくなる可能性が高くなるからとか想像してますが、詳細は不明です。
 
とりあえず、基本的には鼻マスクからトライする方向でよさそうです。
 
  1. 渡部良雄ら. CPAP. 日内会誌. 2020. 109:1073-81.【https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/109/6/109_1073/_pdf
  2. KJ Goh, et al. Choosing the right mask for your Asian patient with sleep apnea: A randomized, crossover trial of CPAP interfaces. Respirology. 2019 Mar;24(3):278-85. PMID:30189465.

心房細動のリハビリテーション安静度はどう設定すべきか

RACEⅡトライアルにおいて、持続性心房細動で寛容なコントロール群(安静時HR<110)は、厳密なコントロール群(安静時HR<80かつ6分間歩行などの中等度運動時HR<110)と比較し、主要転機(心血管死、心不全入院、脳卒中、全身塞栓症、出血、致死的な不整脈イベント)で非劣性。逆に医療受診は厳密なコントロール群が9倍多い。1)
※このトライアルにおいて、持続性心房細動の症候性、無症候性は問わない
 
持続性心房細動の安静時目標心拍数はHR<110が推奨される。
 
心房細動患者は運動負荷に対する心拍数上昇の程度が大きいことが多く、その反応は患者ごとに異なり、また体調によっても異なるため、心拍数による運動強度設定は困難。2)
安静時に心拍数が110を超えているならその日の運動療法は中止するか、運動強度を下げるか、運動時間を短くしたメニューを考案する。また、運動療法導入後に心不全の自覚症状や他覚所見があれば、運動強度を下げることを含め、心不全に対する加療を行う必要がある。特に運動中の心拍数過上昇に注意し(心拍数変動10/min以下を用いてもよい)、心拍数が150/min以下の負荷で運動を実施することが推奨される。2)
 
心房細動の運動時目標心拍数で、エビデンスのある値はなく個別化が大事だが、ガイドラインではHR≦150を一つの基準として設定している。
 
ちなみに非持続性心房細動の患者に、運動療法を行った群と対照群では、運動療法群では心房細動の平均時間が8.1→4.8%に減少、対照群では10.4→14.6%に増加した研究がある。3)
 
非持続性心房細動患者は、運動療法がむしろ良い転機を生む可能性がある。
 
1) H.F.Groenveld, et al. Rate control in atrial fibrillation, insight into the RACE Ⅱ study. Neth Heart J. 2013 Apr;21(4):199-204. PMID:3673602.
2) 日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会. 2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン. 【https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/03/JCS2021_Makita.pdf
3) V Malmo, et al. Aerobic Interval Training Reduces the Burden of Atrial Fibrillation in the Short Term: A Ramdomized Trial. Circulation. 2016 Feb 2;133(5):466-73. PMID:26733609.【https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26733609/

運動負荷を伴う訓練を実施するための基準(リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン第2版)

訓練中止を考慮する具体的条件(数値編)
収縮期血圧180-200mmHgを超える場合、または収縮期血圧70-90mmHg未満の場合
・脈拍40未満、または120-150/分を超える場合
・呼吸数5-8回/分未満、呼吸数30-40回/分を超える場合
・SpO2:88-90%未満
 
※バイタルサイン等については具体的な数値を示している部分もあるが、これらはあくまで目安であり、絶対的なものではない。特に心大血管疾患の急性期や術後早期、脳血管疾患の急性期等では全身状態は不安定であり、本基準のみで適切に対応することは困難である。そのほか、高齢者やがん患者等虚弱な患者においても慎重な対応を行う必要がある場面もある。実際の診療現場においては個々の患者の状態に応じて個別に判断する必要がある。これはリハビリテーション処方を行う医師の責任において行われることが求められる。
 
 
訓練中止を考慮する具体的条件(その他)
・新規の不整脈意識障害、胸痛、頭痛、腹痛、悪心嘔吐、めまい、浮腫
・原因不明の意識障害、胸痛、腹痛、悪心嘔吐、めまい、浮腫
・バイタルサイン異常を伴う呼吸状態不良、胸痛、腹痛、悪心嘔吐、めまい、浮腫
・痙攣が新たに生じた場合(新規でなくてもよいと思われる)
・症候性不整脈
・著明な脈拍変動
・増悪傾向の意識障害
・急速な呼吸状態悪化
・急速に増悪した浮腫
・激しい頭痛
 
問題があっても訓練実施を考慮できる条件
下記の場合は、原因が明確であり、全身状態が安定していると判断できる場合は、訓練を実施することを提案する。ただし、訓練を実施する際には、症状やバイタルサインの変化に注意し、訓練内容は患者の状態に応じて調整する必要がある。
 
・血圧上昇・血圧低下
意識障害(※失神やせん妄含む)
・呼吸状態が不良
・胸痛
・筋骨格系疼痛
・頭痛
・嘔気嘔吐
・めまい
・発熱
 
日本リハビリテーション医学会. リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン第2版. 診断と治療社 2018.
 
本基準の印象
・本文にも記載されているが、各々の根拠に使われるエビデンスの多くは、リハビリテーション医療の対象となる患者群とは必ずしも一致していない、という限界があるため、あくまで参考所見としての認識が良いだろう。ただ何も基準がないなかでリハビリテーションを行うよりは、本書のような基準があった方が安心であろう。
・訓練中止を考慮する具体的条件(その他)は細かくみていくと
"新規ー"と"原因不明のー"と"バイタルサイン異常ー"の記載がある症状は少しずつ異なっているが、その違いに大きな意図はないものと思われる。理解しやすい形にまとめると、原因不明(新規含む)、もしくはバイタルサイン異常を伴う、もしくは重度・急性増悪を来した上記症状の場合は運動負荷訓練中止を考慮する、でよいだろう。

運動負荷を伴う訓練を実施するための基準(リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン第2版)

訓練中止を考慮する具体的条件(数値編)
収縮期血圧180-200mmHgを超える場合、または収縮期血圧70-90mmHg未満の場合
・脈拍40未満、または120-150/分を超える場合
・呼吸数5-8回/分未満、呼吸数30-40回/分を超える場合
・SpO2:88-90%未満
 
※バイタルサイン等については具体的な数値を示している部分もあるが、これらはあくまで目安であり、絶対的なものではない。特に心大血管疾患の急性期や術後早期、脳血管疾患の急性期等では全身状態は不安定であり、本基準のみで適切に対応することは困難である。そのほか、高齢者やがん患者等虚弱な患者においても慎重な対応を行う必要がある場面もある。実際の診療現場においては個々の患者の状態に応じて個別に判断する必要がある。これはリハビリテーション処方を行う医師の責任において行われることが求められる。
 
 
訓練中止を考慮する具体的条件(その他)
・新規の不整脈意識障害、胸痛、頭痛、腹痛、悪心嘔吐、めまい、浮腫
・原因不明の意識障害、胸痛、腹痛、悪心嘔吐、めまい、浮腫
・バイタルサイン異常を伴う呼吸状態不良、胸痛、腹痛、悪心嘔吐、めまい、浮腫
・痙攣が新たに生じた場合(新規でなくてもよいと思われる)
・症候性不整脈
・著明な脈拍変動
・増悪傾向の意識障害
・急速な呼吸状態悪化
・急速に増悪した浮腫
・激しい頭痛
 
問題があっても訓練実施を考慮できる条件
下記の場合は、原因が明確であり、全身状態が安定していると判断できる場合は、訓練を実施することを提案する。ただし、訓練を実施する際には、症状やバイタルサインの変化に注意し、訓練内容は患者の状態に応じて調整する必要がある。
 
・血圧上昇・血圧低下
意識障害(※失神やせん妄含む)
・呼吸状態が不良
・胸痛
・筋骨格系疼痛
・頭痛
・嘔気嘔吐
・めまい
・発熱
 
日本リハビリテーション医学会. リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン第2版. 診断と治療社 2018.
 
本基準の印象
・本文にも記載されているが、各々の根拠に使われるエビデンスの多くは、リハビリテーション医療の対象となる患者群とは必ずしも一致していない、という限界があるため、あくまで参考所見としての認識が良いだろう。ただ何も基準がないなかでリハビリテーションを行うよりは、本書のような基準があった方が安心であろう。
・訓練中止を考慮する具体的条件(その他)は細かくみていくと
"新規ー"と"原因不明のー"と"バイタルサイン異常ー"の記載がある症状は少しずつ異なっているが、その違いに大きな意図はないものと思われる。理解しやすい形にまとめると、原因不明(新規含む)、もしくはバイタルサイン異常を伴う、もしくは重度・急性増悪を来した上記症状の場合は運動負荷訓練中止を考慮する、でよいだろう。

積極的な運動療法が禁忌となる疾患・病態 (心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン)

絶対的禁忌
・不安定狭心症または閾値の低い(平地のゆっくり歩行[2MET]で誘発される)心筋虚血。
・過去3日以内の心不全の自覚症状(呼吸困難、易疲労感など)の増悪。
・血行動態異常の原因となるコントロール不良の不整脈心室細動、持続性心室頻拍)
・手術適応のある重症弁膜症。特に症候性大動脈弁狭窄症。
・閉塞性肥大型心筋症などによる重症の左室流出路狭窄。
・急性の肺塞栓症、肺梗塞および深部静脈血栓症
・活動性の心筋炎、心膜炎、心内膜炎。
・急性全身性疾患または発熱。
運動療法が禁忌となるその他疾患(急性大動脈解離、中等症以上の大動脈瘤、重症高血圧症(原則として収縮期血圧>200mHg、または拡張期血圧>110mmHg、あるいはその両方)、血栓性静脈炎、2週間以内の塞栓症、重篤な多臓器疾患など)
・安全な運動療法の実施を妨げる精神的または身体的障害。
相対的禁忌
重篤な合併症のリスクが高い発症2日以内の急性心筋梗塞(貫壁性の広範囲前壁心筋梗塞、ST上昇が遷延するものなど)。
・左冠動脈主幹部の狭窄。
・無症候性の重症大動脈弁狭窄症。
・高度房室ブロック(心房→心室の刺激伝導が3:1以下の状態)。
・血行動態が保持された心拍数コントロール不良の頻脈性または徐脈性不整脈(非持続性心室頻拍、頻脈性心房細動、頻脈性心房粗動など)。
・最近発症した脳卒中(一過性脳虚血発作を含む)。
運動療法が十分行えないような精神的または身体的障害。
・是正できていない全身性疾患(貧血、電解質異常、甲状腺機能異常など)。
禁忌でないもの
・高齢者。
・左室駆出率低下。
・血行動態が保持された心拍数コントロール良好な不整脈(心房細動、心房粗動など)。
・静注強心薬投与中で血行動態が安定している患者。
・補助人工心臓(LVAD)、植込み型心臓電気デバイス(永久ペースメーカー)、植込み型除細動器(ICD)、両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-Dなど)装着。
 
 
上記は日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会. 2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン 【https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/03/JCS2021_Makita.pdf】から引用。
 
本基準の印象
・心臓リハビリテーションガイドラインだが、本ガイドラインに記載された心臓リハビリテーションの定義が「心血管疾患患者の身体的・心理的・社会的・職業的状態を改善し、基礎にある動脈硬化心不全の病態の進行を抑制または軽減し、再発・再入院・死亡を減少させ、快適で活動的な生活を実用することをめざして、個々の患者の「医学的評価・運動処方に基づく運動療法:冠危険因子是正・患者教育およびカウンセリング・最適薬物治療」を多職種チームが協調して実践する長期にわたる多面的・包括的プログラム」とかなり広い意味で定められている。心血管疾患患者全般の運動療法が該当範囲となっており、動脈硬化も含めるとほとんどの高齢者が該当すると考えられる。そのなかの運動療法の禁忌を提示してくれており、参考になる。
・数字を用い定量的に表してくれている項目があるのはとてもありがたい。
・急性/活動性/安全な/最近発症/運動療法が十分行いないような/コントロール良不良/重篤な/全身性疾患や精神疾患(の程度)など、評価にばらつきがでそうな項目もみられ、臨床判断になると思われる。各疾患の重症度定義や目標数値は別途確認が必要。
・発熱が運動療法の絶対禁忌は過剰対応かもしれない。"発熱の原因が明確であり、全身状態が安定していると判断できる場合は、訓練を行うことを提案する(症状やバイタルサイン変化に注意し、訓練内容の調整は必要)"とリハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン第2版に記載がある。
血栓性静脈炎は該当範囲の確認必要。例えばモンドール病を合併したら運動療法が禁忌になるのは理解しがたい。
2週間以内の塞栓症という概念の該当範囲は確認必要。心原性脳塞栓症全例で発症2週間以内の早期リハビリテーションを行わないことは脳卒中ガイドライン上推奨されておらず、むしろ早期リハビリテーションを推奨している。