きのこの備忘録

筆者が調べた事やまとめた事を共有しています。医療職を対象とした記事がメインです。論文のような正確性よりは分かりやすさを優先して書いています。一般臨床への応用は自己責任でお願いします。

心房細動のリハビリテーション安静度はどう設定すべきか

RACEⅡトライアルにおいて、持続性心房細動で寛容なコントロール群(安静時HR<110)は、厳密なコントロール群(安静時HR<80かつ6分間歩行などの中等度運動時HR<110)と比較し、主要転機(心血管死、心不全入院、脳卒中、全身塞栓症、出血、致死的な不整脈イベント)で非劣性。逆に医療受診は厳密なコントロール群が9倍多い。1)
※このトライアルにおいて、持続性心房細動の症候性、無症候性は問わない
 
持続性心房細動の安静時目標心拍数はHR<110が推奨される。
 
心房細動患者は運動負荷に対する心拍数上昇の程度が大きいことが多く、その反応は患者ごとに異なり、また体調によっても異なるため、心拍数による運動強度設定は困難。2)
安静時に心拍数が110を超えているならその日の運動療法は中止するか、運動強度を下げるか、運動時間を短くしたメニューを考案する。また、運動療法導入後に心不全の自覚症状や他覚所見があれば、運動強度を下げることを含め、心不全に対する加療を行う必要がある。特に運動中の心拍数過上昇に注意し(心拍数変動10/min以下を用いてもよい)、心拍数が150/min以下の負荷で運動を実施することが推奨される。2)
 
心房細動の運動時目標心拍数で、エビデンスのある値はなく個別化が大事だが、ガイドラインではHR≦150を一つの基準として設定している。
 
ちなみに非持続性心房細動の患者に、運動療法を行った群と対照群では、運動療法群では心房細動の平均時間が8.1→4.8%に減少、対照群では10.4→14.6%に増加した研究がある。3)
 
非持続性心房細動患者は、運動療法がむしろ良い転機を生む可能性がある。
 
1) H.F.Groenveld, et al. Rate control in atrial fibrillation, insight into the RACE Ⅱ study. Neth Heart J. 2013 Apr;21(4):199-204. PMID:3673602.
2) 日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会. 2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン. 【https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/03/JCS2021_Makita.pdf
3) V Malmo, et al. Aerobic Interval Training Reduces the Burden of Atrial Fibrillation in the Short Term: A Ramdomized Trial. Circulation. 2016 Feb 2;133(5):466-73. PMID:26733609.【https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26733609/