きのこの備忘録

筆者が調べた事やまとめた事を共有しています。医療職を対象とした記事がメインです。論文のような正確性よりは分かりやすさを優先して書いています。一般臨床への応用は自己責任でお願いします。

働くすべての人が知っておきたい、傷病者手当について

現在リハビリ科研修の中で、社会福祉の制度について勉強する機会を頂いています。

その中で"傷病者手当"についてはすべての労働者が知っておいた方が良い知識だと思います。個人的に大事なだと思った点についてまとめて共有します。

 

■受給対象

社会保険加入者(国民健康保険は該当外)

・業務外での病気やケガのため医師の診察を受け、労務不能と判定され3日以上連続して仕事を休み、4日目以降も休んだ日がある方

・同一傷病では1回のみ申請可能(他の傷病では再度申請可能)

 

※このため、自営業(国民健康保険)の方は対象外になります。その理由については下記URL参照。

https://diamond.jp/articles/-/174701

※ちなみにCOVID-19感染での休業であれば国民健康保険の方でも受給できるように制度改正が行われています。

https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=64427?pno=2&site=nli

※業務内での病気やケガは労災保険の守備範囲になります。

 

■受給期間および受給額

・休業4日目から受給対象となります。

・最長18カ月受給できます。

・受給額は、過去12か月の平均月収の2/3です。

 

※有給消化した場合、月収全額もらえるためまずは有給を消化したあとに傷病手当金の受給をすることが多いです。なお有給期間も、受給条件である3日以上の休業期間に含めることができます。また、給料が支給されていたり、同じ傷病でで障害厚生年金など他の支給がある場合、傷病手当金の支給額の調整がなされます。

 

■受給手順

①申請書を入手(会社からもらったり、自分でwebからダウンロードする)

※下記は全国健康保険協会協会けんぽ)加入者向けのフォーマットです。

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g2/cat230/r124/

 

②主治医に"療養担当者記入用"の欄に傷病名などを記載してもらう。

※書類発行料で数千円かかります。

 

③自分で"被保険者記入用"の欄に記入する。

 

④会社に提出し、"事業主記入欄"に勤務状況や給与などを記載してもらう。

 

⑤上記で書類が完成したら、加入している健康保険団体に書類を提出する。

協会けんぽの場合、健康保険証に書かれている支部の住所に郵送するか持参します。

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat610/cat210/2002-2713/

※会社が書類を郵送してくれたりします。

 

⑥受給決定がなされたら、自分の指定銀行口座にお金が振り込まれます

https://partners.en-japan.com/qanda/desc_1037

 

■その他

傷病手当金は、過去の休業に対してのみ申請できます。そして1か月単位で申請しても1年半分を一気に申請しても良いことになっています。申請毎に書類提出が必要になり、手数料もかかるのでお金に余裕がある方は一括申請の方が良いかも知れません。ただお金に余裕がない方は、休業中も社会保険費の支払いは継続されるため、それの支払いのために1か月単位で申請する方もいます。

 

・退職し社会保険から脱退した後でも、傷病の発症が在職期間内であれば、遡って申請することができます。

 

・支給に当たっては、毎月保険料を納めている社会保険組合からお金が支給され、会社がお金を払うわけではないので、会社に申し訳ないとは考えなくても良い。

 

 

以上、個人的に大事だと思う点をまとめてみました。

医師は傷病手当支給申請書の"療養担当者記入用"を書く機会の方が多いと思いますが、制度の概要を知っておいた方が自分が必要になったときや患者に相談されたときにも適切な対応をとれるようになると思います。