きのこの備忘録

筆者が調べた事やまとめた事を共有しています。医療職を対象とした記事がメインです。論文のような正確性よりは分かりやすさを優先して書いています。一般臨床への応用は自己責任でお願いします。

飢餓状態なのに脂肪肝?

■飢餓状態で脂肪肝(NASH)になるメカニズム
 飢餓状態では血糖値が低下するため、末梢の脂肪細胞から大量の脂肪酸がエネルギーとなるべく動員される。これらは肝臓のミトコンドリアにおいてβ酸化され、エネルギー源となる。
完全な絶食状態ならこのままエネルギーとなり脂肪肝にはならないが、この際少量の炭水化物が補充されると、脂肪酸はβ酸化されず、中性脂肪に変化して肝細胞に取り込まれる。
加えて、絶食状態では肝細胞のミトコンドリアに機能障害が生じ、β酸化が障害される可能性も考えられている。
中性脂肪は肝臓に取り込まれる他、一部は蛋白質と結合しVLDLとして血中に分泌されるが、その際にレシチンやアポ蛋白Bといった蛋白質が必要となる。ただ飢餓状態では蛋白質が欠如しており、中性脂肪の分泌が抑制され肝臓に留まることになる。実際に飢餓状態の脂肪肝患者には血中の中性脂肪、VLDLが低下しており、蛋白質の摂取によりこれらは著明に改善する。
 【https://www.jstage.jst.go.jp/article/kanzo1960/39/1/39_1_1/_pdf