きのこの備忘録

筆者が調べた事やまとめた事を共有しています。医療職を対象とした記事がメインです。論文のような正確性よりは分かりやすさを優先して書いています。一般臨床への応用は自己責任でお願いします。

リハビリテーション科専門医の価値

リハビリテーションの指示(PT、OT、ST処方)はどの医師にもできる。はたしてリハビリテーション科専門医の価値はどこにあるのだろうか。
この答えは一部の業務独占できる診療科を除くすべての専門医の価値と同様、医療の質にある。
たとえば皮膚科医でなくても軟膏の処方はできるが、眼科でなくても点眼の処方はできるが、感染症科でなくても抗菌薬の処方はできるが、それぞれの専門医より優れた処方ができる医師は少ない。
リハビリテーション科専門医はその知識経験により、検査も駆使した現状の把握(①参照)、最適なリハビリテーションの選択(②参照)、リハビリテーションの期待される効果(③参照)とリスク管理(④参照)、患者の助けになる器具や制度の適応判断(⑤参照)をすることで、最適なゴール設定とそこへの到達を導く。
 
実際、脳卒中急性期患者にリハビリテーション科専門医がかかわると、在院日数短縮、在宅復帰率向上、日常生活動作向上につながるといった報告や1)2)3)、脳外傷患者にリハビリテーション科医がかかわると日常生活動作向上につながるといった報告や4)高齢大腿骨近位部骨折患者のリハビリテーション科専門医がかかわると、在院日数短縮、日常生活動作向上につながるといった報告5)6)がある。
 
①:リハビリテーション科医が行う検査には、通常の検体検査や画像検査のほかにも、神経伝導検査、針筋電図検査、嚥下造影検査、嚥下内視鏡検査、心肺運動負荷試験などがある。
②:ただPT、OT、STの処方を出すだけでなく、それぞれの中のどの療法を選択すべきか判断できる。例えば脳卒中上肢片麻痺に対し、エビデンスの豊富なCI療法(Constraint-induced movement therapy)を指示するなど。
③:どのくらいの期間のリハビリテーション加療で、どのくらいまでよくなる見込みがあるか=予後予測を、知識(エビデンス)や経験に基づき判断できる。
④:必要な介助量、許容できる荷重量、心肺疾患を持つ患者の負荷量などを評価し、最適な安静度・活動度の指示ができる。
⑤:補助具、装具、義肢などを処方したり、介護保険障害者手帳申請に必要な意見書・診断書を作成することができる。
 
 
  1. Kinoshita S, Kakuda W, Momosaki R, Yamada N, Sugawara H, Watanabe S, Abo M. Clinical management provided by board-certificated physiatrists in early rehabilitation is a significant determinant of functional improvement in acute stroke patients: a retrospective analysis of Japan Rehabilitation Database. J Stroke Cerebrovasc Dis 2015; 24: 1019-1024.
  2. Kinoshita S, Okamoto T, Abo M. Impact of Clinical Management Provided by Board-certificated Physiatrists on Functional Improvement in Acute Stroke Patients: A Retrospective Analysis Using Japan Rehabilitation Database. Jpn J Rehabil Med 2016; 53: 197-201.
  3. Aoyagi Y, Saito E. Contribution of Japansese Borad-certificated Physiatrists to Acute Stroke Patients Based on the Japan Rehabilitation Database and Perspectives to Future Analysis for Rehabilitation Outcome. Jpn J Rehabil Med 2016; 53: 207-10.
  4. Greiss C, Yonclas PP, Jasey N, Lequerica A, Ward I, Chiaravalloti N, Felix G, Dabaghian L, Livingston DH. Presence of a dedicated trauma center physiatrist improves functional outcomes following traumatic brain injury. J Trauma Acute Care Surg 2016; 80: 70-75.
  5. Momosaki R, Kakuda W, Yamada N, Abo M. Impact of board-certificated physiatrists on rehabilitation outcomes in elderly patients after hip fracture: an observational study using the Japan Rehabilitation Database. Geriatr Gerontol Int. [Epub ahead of print]
  6. Momosaki R. Board-Certificated Physiatrists and Functional Recovery after Hip Fracture. Jpn J Rehabil Med 2016; 53: 202-6.

毒性の高い肺炎桿菌(hypervirulent klebsiella pneumoniae)の特徴は何か

・基礎疾患がなくても感染。
・アジア太平洋で一般的だが世界的に発生。
・複数部位に感染したりする。
髄膜炎などの中枢神経感染、眼内炎、肝膿瘍、壊死性筋膜炎にをきたすことが多い。
・病原性プラスミド上に存在するバイオマーカーが、見分けるのに最も正確。

血行性骨髄炎の好発部位はどこか

小児は長管骨の骨幹端が多い。成長板閉鎖前の骨幹端は血流が豊富で、血流が遅いため、病原体が増殖するのに好条件。

成人は椎体や骨幹部が多い模様。
 

バリウム検査で慢性便秘になったらどうするべきか

バリウムを飲み込むと、患者の 57% で 1 週間以内に結腸から除去され、ほとんどの患者で 4 週間以内に完全に除去される。
バロリス(Baroliths)とは、硫酸バリウム造影剤の経口または直腸投与後に形成される濃縮したバリウムと糞便の混合物を指す。バロリスは無症候性であることが多いが、塊の量が増加すると、腹痛、吐き気、嘔吐、重度の便秘、腸閉塞、腸管壁壊死・穿孔によるバリウム腹膜炎、虫垂炎、巨大直腸、腹部コンパートメント症候群を引き起こすこともある。
バリウム検査とバロリスによる症状発現の間隔は、2 日から 2 年の範囲である。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6692969/】(←バリウム検査9か月後のバリウム便秘の症例提示あり)
バリウム服用から消化管穿孔発症までの期間は、医中誌38例+自験例5例で、9か月の1人を外れ値で除くと、平均3日(1-9日)。穿孔部位は横行結腸1例(3.6%)、下行結腸7例(25%)、S状結腸17例(60.7%)、直腸3例(10.7%)。
バリウム服用から消化管穿孔発症までの期間は、過去報告26例+自験例8例で、平均4日。S上結腸穿孔が24例(74%)、消化器疾患既往が1/3に認められた。
 
慢性症状や遅れて発症する例に、バロリス形成されているけど完全閉塞には至っていない症例が稀にありそうです。一度腹部X線でみてみてもよいかもしれません。

変形性膝関節症の運動の許容範囲

すべての変形性膝関節症の患者に、痛みの緩和と関節の保護のために継続的な運動は推奨される。
最適な運動様式・運動強度・期間・頻度に関する強力なエビデンスはない。
ランニングやジャンプなどの関節への大きな影響を伴う運動は、特により進行した 変形性膝関節症の場合、さらなる関節損傷を避けるために、通常は推奨されないが、ランニングと変形性膝関節症 の進行との関連性を示す研究証拠はほとんどない。
軽度の変形性膝関節症を発症しているが、ランニングを続けたいと考えている患者には、休息日、ランニング道路、距離と速度、履物などの要素にも注意を払った負荷管理アプローチを提唱する。
 

てんかん発作時の治療

ほとんどの発作は2分以内に自然に収まり、ベンゾジアゼピン系や抗てんかん薬を迅速に投与する必要はない。ただ長期化したり再発した場合に備え、静脈ライン確保は検討される。
5分以上持続する全般性けいれん、または1回あたりは5分未満でも意識レベルがベースラインまで回復しない複数回の両側性けいれん発作があれば、てんかん重積の診断となる。
てんかん重積状態とは、発作がある程度の長さ以上に続くか、または短い発作でも反復し、その間の意識の回復がないものと定義されてきた。国際てんかん連盟の1981年のこの定義では発作の持続時間は定められていなかったが、発作の持続時間が長くなると薬剤抵抗性になることが明らかになってきており、国際てんかん連盟の2015年の報告では、5分以上持続した場合はてんかん重積状態と診断し、治療を始めることが推奨されている。なお動物実験ではてんかん放電が30分以上持続すると、後遺症を残す可能性が示唆されている。
ベンゾジアゼピン系薬は痙攣性てんかん重責発作の第一選択薬。
日本ではジアゼパム静注(ホリゾン®, セルシン®)が選択されることが多いが、ロラゼパム静注(ロラピタ®)の方が発作停止効果は優れている模様。(ただすぐロラゼパム静注が出てくる病院がどれだけあるかは疑問・・・。)
ベンゾジアゼピン系薬の投与でてんかん重積発作が収まったとしても、ベンゾジアゼピン系薬は半減期が短いため、再発予防に非ベンゾジアゼピンてんかん薬がUptodate®で推奨されている。ここでの抗てんかん薬は、レベチラセタム(イーケプラ®)、フォスフェニトイン(ホストイン®)、バルプロ酸デパケン®)のどれかを選択する。すでにどれかを長期使用している場合、血中濃度が低いと分かっている場合は導入可だが、低くないもしくは血中濃度不明の場合は、使用していない薬を選択する方が無難。

てんかんの定義

次のいずれかが存在する場合、てんかんと定義される。(国際てんかん連盟=ILEA基準)
・24時間以上の感覚を開けて少なくとも2回の原因のない発作
・1回の非誘発性発作があり、今後10年間で推定再発リスクが60%以上の場合(脳の基礎疾患がみつかった場合など)
てんかん症候群の診断(特徴的で名前がついたてんかん 例:欠神てんかん、若年性ミオクローヌスてんかん